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【AI活用事例】証憑突合・仕訳チェックをAIとRPAで一気に効率化!

  • yutarokunizuka
  • 10月7日
  • 読了時間: 6分

AIは日々目まぐるしい進化を遂げ、経理や監査の現場でも「AIを活用したい」「活用しなければならない」と感じている方は多いのではないでしょうか。しかし、実際に業務フローへ組み込むとなると、導入のハードルが高く、なかなか一歩を踏み出せない…という声も少なくありません。

そこで本記事では、Dify(AIフロー構築ツール)を用いて、生成AI(Chat GPT・Gemini等)とRPA(Power Automate)を組み合わせて、証憑突合・仕訳チェックを効率化した事例をご紹介します。

経理・監査等の業務に従事する方々皆さまに馴染みのある仕訳チェックを題材として、AI・RPAの活用事例を具体的にイメージいただける内容になっています。


【目次】

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1. 証憑突合・仕訳チェックの作業概要と課題


証憑突合とは、取引データ(仕訳帳や会計システムの記録)と、その裏付けとなる証憑(請求書や領収書、契約書など)を照合し、正しく処理されているかを確認する作業です。

1件ごとに証憑ファイルを開き、金額・日付・取引先を確認し、仕訳帳と突き合わせる――経理・監査業務における基本かつ重要なチェックですが、件数が増えると大きな負担となります。


主な課題

  • 件数が多いと膨大な時間がかかる

  • 見落としや見間違いといった人的ミスのリスク

  • 単純作業で本質的ではないため、できるだけ早く終わらせたいが時間を奪われる

  • 証憑突合に時間を取られ、より重要な業務や検討に割ける時間が減少


結果として「正確さが求められる一方で非効率」という矛盾を抱え、現場にとって大きな課題となっています。



2. AIとRPAによる効率化の仕組み


ここからは、AIとRPAを組み合わせた証憑突合・仕訳チェック効率化の仕組み及びフローを順に解説します。


① 事前準備

AI×RPAによる効率化の仕組み_事前準備イメージ
  • テスト対象である取引データが掲載されたExcelファイルを準備

  • 上記と同じExcelファイルに以下を記録する表を設置

    ① AIが解析して抽出したエビデンス情報

    ② 突合結果

  • 取引証憑PDFファイル(請求書等)を準備


② AIによる取引証憑PDFファイルの解析

AI×RPAによる効率化の仕組み_証憑ファイルのAI解析イメージ

取引証憑PDFファイルをDify*にアップロードすると、予め設定しておいたプロンプトに従って、AIが各ファイルの中身を解析し、以下のデータを抽出します。

  • 取引先名称

  • 取引日付

  • 取引金額

  • 取引内容


*Difyについてはこちらのページを参照してください。


③ RPAによる自動記録

AI×RPAによる効率化の仕組み_RPA自動転記イメージ

AIが解析して抽出したエビデンス情報をRPA(Power Automate*)がExcelファイル(AI解析結果記録フォーマット)に自動で記録します。これにより、以下の画像のようにテスト対象データと証憑データを同じExcelファイル上に横並びで掲載し比較可能な状態になります。


AI×RPAによる効率化の仕組み_RPA自動転記結果イメージ

*PowerAutomateについてはこちらのページを参照してください。


④ Excelでの自動突合

突合結果記録フォーマットに予めIF関数やXLOOKUPなどを用いて、テスト対象データと証憑データの一致・不一致を自動的にチェックするための関数を組んでおくことで、AIが証憑PDFを解析して必要データを抽出し、それをPower AutomateがExcelに自動転記した時点で、テスト対象データと証憑データの突合およびその結果の記録が自動的に行われます。


⑤ 人間による最終確認

AI、RPAおよびExcel関数による自動突合完了後、不一致箇所やAIが上手く解析できなかった箇所を人間が確認し最終判定を行うことで、効率性と正確性を両立します。


補足:実務での応用可能性

今回は説明用に、テスト対象取引と請求書が1対1で対応する単純なケースを例にしました。しかし実際の実務では、請求明細ごとに仕訳が計上されるケースも多く存在します。

こうした複雑なケースについても、AIのプロンプト設計を工夫することで効率化が可能です。また、単純な仕訳と複雑な仕訳が混在する場合には、単純な仕訳のみAI・RPAに任せて、人間は複雑な仕訳に注力するといった分担を行うことで、人間リソースを有効に活用して効率化を図ることも考えられます。



3. 自動化による効果

自動化による効果

大幅な時間短縮

証憑確認と記録をAIが代行することで、仕訳チェック・証憑突合に要する時間は約半分に。従来1件3分 → AI導入後は1〜1.5分。大量処理では数時間〜1日単位の削減効果が期待できます。


単純作業からの解放と人間の負荷軽減

AIが単純作業を担うことで、担当者は分析や判断といった本質的な業務に集中できます。


ミス・遅延の防止

AIは一貫した基準で処理するため、人的ミスを削減し、作業の遅延リスクを抑制します。


プロセス全体のスピードアップ

証憑入手直後にAIが瞬時に突合を実施 → 追加質問や資料依頼を即座に開始可能。経理部門・内部監査部門・監査法人の全体プロセスがスピードアップします。



4. 経理・監査業務におけるAIの活用余地


今回は「仕訳チェック・証憑突合」を題材として解説しましたが、例えば以下の業務など経理・監査業務におけるAIの活用余地は至るところに存在します。


  • 異常値検知

  • 継続的モニタリング

  • 監査手続全般のレビュー


AIを活用するチームとそうでないチームの間で、スピード・品質に大きな差が出るのは時間の問題です。AI活用は「選択肢」ではなく「必須」になるでしょう。


さらにRPAと組み合わせれば、異常値検知やエラー発見時に自動でTeams通知を行うといったプロセス全体の効率化も可能です。AIが「判断」、RPAが「実行」という役割分担で、業務全体をよりスマートに進められるようになります。


5. まとめ:AI活用のススメ


AI×RPAの活用により、経理・監査業務は大きく変革すると考えられ、以下の効果をもたらします。


  • 工数半減による時間短縮

  • 人的負荷の軽減

  • ミス・遅延の防止

  • プロセス全体のスピードアップ


これらの効果は、経理・監査業務の新たなスタンダードとなっていくはずであり、AI・RPA等の技術を有効に使っているチームとそうではないチームの間では、業務品質、コスト、スピードに差がついていくこととなるでしょう。


おわりに

Difyを用いたAIの活用やDifyとRPAを組み合わせたAIエージェントはこれまで煩わしかった経理関連業務を効率化・自動化し、経理関連業務をより付加価値の高い業務へと進化させられる可能性を秘めています。ぜひ、Difyを活用して皆さまの業務効率化・高度化にお役立ていただければ幸いです。


なお、弊社では、経理関連業務や会計監査業務におけるAI活用やDX推進サービスを提供しております。貴社のニーズに即して、柔軟に対応可能ですので、お気軽にご相談ください。→サービスの詳細はこちらのページをクリック


執筆者:株式会社トランザック | 公認会計士 | 國塚裕太郎

大学卒業後、大手監査法人にて10年以上の監査経験のほか、大手商社にて経理実務に従事。大手会計事務所の会計アドバイザリー事業部に所属し、経理関連プロセスの高度化・効率化、DX化支援やシステム導入支援等のコンサルティングサービスに従事。 2021年に株式会社トランザックを共同設立し、クラウドアプリケーションの開発・販売、MicrosoftのPowerPlatformやAIを活用した会計業務・監査業務のDX支援サービスを提供。

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