【新リース会計】影響度分析の進め方: 押さえておくべき5つのポイント
- 株式会社トランザック
- 4月24日
- 読了時間: 6分
更新日:4月25日
はじめに
2027年4月から適用される新リース会計基準は、企業の財務報告に大きな影響を与える改革です。特に、リース取引に関連するすべての契約を貸借対照表に計上することが求められます。この新基準の適用に向けて、各企業が実施すべき「影響度分析」は非常に重要です。本記事では、影響度分析のステップを具体的に解説します。
【目次】

新リース会計:影響度分析 5つの目的
新リース会計基準が企業に与える影響を評価するためには、リース契約のすべてを棚卸し、それらが財務諸表にどのような影響を及ぼすかを試算する必要があります。特に、リース負債と使用権資産が貸借対照表に計上されることで、企業の財務状態にどのような変化が生じるかを明確にすることが求められます。 この影響度分析の目的は、以下の5つの影響を把握し、その対応を検討することです:
貸借対照表インパクトの把握:オンバランス化されたリース契約がどれだけ財務諸表に影響を与えるかを評価。
損益計算書(PL)インパクト:リース契約に基づく減価償却費や利息費用の影響を確認。
キャッシュフロー計算書インパクト:営業キャッシュフローと財務キャッシュフローの区分変更による影響を分析。
KPI(ROAなど)へのインパクト:リース契約の影響が主要な業績指標(KPI)に与える影響を把握し、財務パフォーマンスの変動を予測。
実務対応インパクト:リース契約の把握や見直しを検討する必要がある拠点や取引規模を特定し、業務運営に及ぼす影響を評価。
これらの目的を達成するためには、リース契約に関する詳細なデータを正確に把握し、それが企業全体の業績に与える影響を評価する必要があります。
影響度分析の5ステップ
新リース会計基準が企業の財務に与える影響を正確に把握するためには、影響度分析を段階的に進めることが重要です。以下のステップを順に実行することで、企業は適切な準備を進めることができます。
1. リース契約の棚卸しと分類
影響度分析の第一歩は、すべてのリース契約を棚卸し、その内容を分類することです。リース契約には、オフィス賃貸契約、機械設備のリース、車両リース、IT機器リースなどがあります。各契約について、以下の項目を確認します:
契約期間
更新オプションの有無
リース料の条件(変動条項、インデックス連動など)
解約条項の有無
この段階では、新基準に適用されるリース契約がどれかを正確に特定し、重要性が低い契約(例えば、金額が300万円以下の契約)については簡便な処理を適用することも検討します。

2. 財務諸表への影響額の試算
リース契約の棚卸しが完了したら、各契約が貸借対照表に与える影響を試算します。具体的には、各リース契約から生じる将来のキャッシュフローを現在価値に割り引き、その結果、リース負債および使用権資産がどれだけ計上されるかを算出します。
数値シミュレーション(例)
月額リース料:1百万円
契約期間:5年(60ヵ月)
割引率:3%(年利)
例えば、上記の条件でリース負債を計算すると、リース負債は約55百万円となります。この見合いとしてリース資産が計上されるため、55百万円の資産と負債が計上されることになります。リース資産は減価償却されます。リース負債は、リース料を利息法に基づき計算された支払利息相当額を差し引いた金額が元本返済分としてリース負債の減少として処理されます。したがって、損益計算書への影響を把握する際には、当該減価償却費と支払利息相当額を把握することになります。
3. キャッシュフローへの影響
リース会計基準の変更により、キャッシュフロー計算書にも影響があります。具体的には、従来オペレーティングリース料はすべて営業活動によるキャッシュフローに計上されていましたが、新基準では、リース料が元本返済部分と利息支払い部分に分けられ、元本返済部分は財務活動によるキャッシュフローの区分に計上されます。
キャッシュフローのシミュレーション
従来の営業CF:100万円(リース料)
新基準後:営業CF(利息分)5万円、財務CF(元本返済分)95万円
このように、営業CFは改善しますが、財務CFは悪化することになります。見かけ上のキャッシュフローの変化に注意し、社内外に誤解を招かないように説明を行うことが重要です。

4. KPIへの影響把握
新基準の適用によって、リース契約の増加が主要な業績指標(KPI)に与える影響を評価します。特に、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)などの指標にどのような影響があるのかを予測し、経営層に対して説明します。新基準により、リース契約がオンバランス化されることで総資産が増加しますが、利益は変わらないため、ROA(総資産利益率)は悪化する可能性があります。一方、ROE(自己資本利益率)については、自己資本が変動しないため、基本的には影響を受けないと考えられます。

5. 実務への影響インパクト
最後に、実務面での影響を評価します。リース契約が多い拠点や、取引規模が大きい事業部門については、契約の見直しや新規契約の再検討を行う必要があるかもしれません。これにより、企業全体の業務運営にどのような影響があるかを把握し、必要に応じて調整を行います。
影響度分析結果の共有と対策
影響度分析の結果が出た後、経営層や各部門に対して影響を報告し、対応策を講じる必要があります。特に、初年度の利益や主要指標への変化は経営判断に大きく影響するため、詳細に共有し、適用後に備えた準備を進める必要があります。具体的には、リース会計に必要なデータの収集方法の見直し、計上プロセスの見直し、開示資料の作成方法や説明方法の見直し、リース取引に関する契約条件の見直しなど、影響の程度に応じた対応を見極めていくことが肝要です。
まとめ:影響度分析の重要性
新リース会計基準の適用に向けた影響度分析は、企業の財務諸表への影響と実務への影響を適切に把握するために不可欠なプロセスです。リース契約の棚卸しから、財務数値やKPIへの影響、そして実務プロセスに与える影響を考慮した、適切な対策や準備に向けた分析とすることが重要です。影響度分析を通じて、企業は新基準適用後の財務報告に備え、円滑な移行を実現するための準備を整えましょう。
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