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AIだけでリースの識別は可能か?新リース基準対応におけるAI活用方法とリース識別のポイント

  • 1 日前
  • 読了時間: 8分

2027年4月から適用される新リース会計基準では、従来「オペレーティング・リース」としてオフバランス処理してきた契約も、原則として資産・負債を計上する必要があります。その最初の関門となるのが 「契約がリースに該当するかどうか」 の識別です。


近年はAI-OCRやAIチャットボットなど、AI技術を使って契約書の解析を行う仕組みが普及しつつあります。では、AIだけでリースの識別は可能なのでしょうか?


新リースの識別で困っている人の絵

目次

1:リース識別の基本的な視点


契約がリースに該当するかどうか判定するには、基準で示される以下の3つの観点が重要です。


  1. 特定された資産の有無

    ― 契約で特定のオフィスや設備、車両などが明確に特定されているか。


  2. 経済的便益の享受

    ― 利用者がその資産から得られる経済的便益をほぼすべて享受するか。


  3. 使用方法を指図する権利

    ― 契約期間中に、その資産をどう使うかを利用者が決定できるか。


この3つを満たす場合に、当該契約はリースが含まれると判断されます。具体的な事例に即したリースの識別に関する詳細は、こちらの記事をご参照ください。


2:リースの識別に関してAIが活躍する領域


リースの識別作業において、AIは以下のような領域で大きな力を発揮します。


  • 資産が特定されているかどうかの判断

    AIに契約書を読み込ませて、資産が特定されているかどうかを判別してもらうことができます。例えば、車両のリースであれば車のメーカー、車の車種名、車両番号等が記載されていれば、資産が特定されているものと判断することができます。

  • オプション条項の読み取り支援

    延長オプションや購入オプションの有無を解析し、判断材料を提示。

  • チャット形式での基準解説

    「少額リースの金額基準は?」といった疑問に即座に応答。


つまりAIは、基準書に従ってリースとなる可能性を提示する支援ツールとして優れています。


3:AIだけでは難しい領域


一方で、AIだけで完全にリース識別を完結させるのは現状では困難です。

実際の契約は多岐にわたり、リースを含む契約か否かについて実務上の判断を伴うケースも多いからです。

その場合には監査法人の見解を踏まえた調整が必要になるため、AIが一義的に結論を出すことはできません。


したがって、AIはリースとなる可能性を提示するが、最終的な判断は人が行う必要がある、という点は押さえておくべきです。


AIが契約書から多くの情報を拾えるとはいえ、以下のような微妙な判断や解釈については現状、人間(専門家)の関与が不可欠です。


  • 「使用権の実質的移転」の有無:

    契約書の文面だけで借り手の使用権(コントロール)があるか判断が難しい場合があります。例えば、契約上はサービス提供のように見えても実態として特定資産の専用利用になっているケース、逆に契約書に資産名があっても貸手が機器の稼働方法を全面的に制御しているケースなどです。契約の形式と実態が異なる場合、AIは文面からは読み取れないため、人が取引全体を理解して判断する必要があります。


  • 代替資産の提供権:

    契約に貸手の代替資産提供権(代替権)が含まれている場合、その権利が実質的に行使される可能性を評価するのは人の判断を要します。新リース会計では貸手が実質的な代替権を有する場合、特定資産が識別されていないとみなされリースではなくなります。しかし契約文に「貸手は必要に応じて同等の資産に交換できる」と書かれていても、それが現実的に起こりうるか(貸手に経済的メリットがあるか等)はケースバイケースです。この経済的実質の評価はAIにとって難しい点であると考えられます。

【代替する権利がある場合の取り扱い】 資産が契約に明記されている場合であっても、次の(1)及び(2)のいずれも満たすときには、サプライヤーが当該資産を代替する実質的な権利を有しており、当該資産は特定された資産に該当しない。 (1) サプライヤーが使用期間全体を通じて当該資産を他の資産に代替する実質上の能力を有している。 (2) サプライヤーにおいて、当該資産を他の資産に代替することからもたらされる経済的利益が、代替することから生じるコストを上回ると見込まれるため、当該資産を代替する権利の行使によりサプライヤーが経済的利益を享受する。 (新リース会計基準適用指針 6項ただし書き)
  • 契約外の情報や将来予測の考慮:

    上記の延長オプションの話とも関連しますが、契約書に書かれていない事実(経営方針、関連契約、資産の代替可能性、市場動向など)を踏まえた判断はAIには荷が重いです。例えば「この設備は特殊で代替が利かないから契約更新は確実」などの判断は、人間が全体状況を見て下すものです。また複数契約にまたがるリース取引(一連の契約をセットで見ないとリースか判断できないケース)も、人間が統合的に検討すべき典型例です。


  • 複雑な条項の解釈:

    契約書によっては非常に複雑な条項やあいまいな表現があります。法律的な解釈を要するケースや、文脈次第で意味が変わる記述について、現状のAIでは正確に解釈できない場合があります。例えば「利用料には設備設置費を含む」などの記述がリース料の範囲に含まれるかどうか、会計基準の専門知識と法律解釈を要する部分は人間の確認が必要です。


  • 会計方針の適用判断:

    基準では短期リースや少額リースのオンバランス計上免除、あるいは借手が非リース部分とリース部分を分離せず一括計上する選択肢など、各社の会計方針判断に委ねられる部分もあります。こうしたポリシー選択(何を適用除外とするか、どの便法を採用するか)は会計方針として定めるべき事項であるため、当該方針によって、処理が異なります。


以上のように、契約書の読み取りを超えて踏み込んだ判断企業ごとの裁量が絡む論点では、依然として人間の専門知見が必要です。AIツール提供各社も「最終的な判断は人が行う前提でAIがサポートする」スタンスを取っています。実際、AIで自動判定した結果に対しては人がレビューし、AIの見落としや誤判定がないか確認するプロセスが欠かせません。AI判定はあくまで絞り込みと参考情報提示の役割であり、「最終的な判断の決定は人間」というのが現状の実務的な位置づけです。



4:実務上の効率化(契約を類型化して識別)


リース識別の効率化には、もう一つのアプローチがあります。

それは 契約の内容に応じて類型化して、パターン別にリース識別を行う方法 です。

個々の契約書を一つ一つ確認するのではなく、契約の内容や種別ごとに類型化して、契約のパターンを処理方針を決めることで、効率的に対応できます。 例えば、

この場合、AIによって契約書を一件ずつ解析するよりも効率的に判断できることもあります。

特に契約件数が多い中堅~大企業では有効な戦略となります。


5:AIと会計士のハイブリッドが最適解


結局のところ、リース識別に関する判断の最適解は「AIとのハイブリッド」です。


  • AI:大量の契約書を読み込み、定型情報や判断のポイントを素早く抽出。

  • 会計士:基準の解釈や取引の実態判断、実務判断、監査法人との調整を担当。


この組み合わせによって、スピードと正確性を両立し、効率的かつ信頼性の高いリース識別が可能になります。


公認会計士による会計業務のDX化支援を行う株式会社トランザックが開発した新リース会計用システム「Transリース会計」は、AIによる契約書の読み取り機能を活用し、新リース会計に準拠した会計仕訳や開示情報を自動作成することが可能です。

契約書に記載された、延長オプションや原状回復義務の有無、非リース費用等を自動判別してくれるため、契約書を隅々まで読み込む時間を短縮することができます。

リースの識別や、リース期間の算定など、専門的な判断が必要な部分については、同社に所属する新リースに強い公認会計士が判断支援をサポート。新リース会計適用に向けた、業務プロセスの構築から、会計処理の自動化、専門的な判断まで丸ごとトランザックにお任せできるというソリューションです。


新リース会計の適用のためだけに、会計リソースを充実させる必要はない。必要な時だけ、必要なリソースを外部に委託し、適用後はシステムだけで回るような仕組みをご提供可能です。

新リース会計をスムーズかつリーズナブルに乗り越えたい企業や会計プロフェッショナルの方々に最適なソリューションです。 ソリューションの詳細は以下のページをご参照ください。

  • Transリース会計について:Link

  • トランザックによる新リース会計適用支援コンサルティングサービス:Link



6:まとめ

いかがだったでしょうか。

  • AIはリースの可能性を提示し、契約情報の整理を大幅に効率化できる。

  • ただし、最終的なリース識別の判断は人間―特に会計士の判断が不可欠。

  • 実務では契約種別ごとに区分する方法も検討され、AIによる個別確認より効率的な場合もある。

  • AI×会計士の二人三脚が、新リース会計基準の時代を乗り切るカギとなる。


【参考】新リース会計実務関連ブログ


 
 
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